AZABU TAKANO

70th

業務用時代から引き継ぐ「安定感」という伝統

1950年、先代が創業した当時、私たちは業務用コーヒーの焙煎からスタートしました。業務用コーヒーは味の「安定感」が大切です。そのため、さまざまな産地の豆をブレンドし、美味しさと安定を作り出しました。

コロンビア、ブラジル、モカを中心に、グアテマラやマンデリンなどを少し混ぜるといった具合で、5種類のブレンドを提供していました。当時ブレンド名は、焙煎の度合いと配合によって「A、B、C、D、Eミックス」というように機械的な呼び方でした。

その後1980年代には、ご家庭でもコーヒーを楽しんでいただこうと、一般消費者向けにコーヒーを販売するようになります。このとき販売するようになったのが、当時弊社で一番人気だった、やや酸味のある「Aミックス」とやや苦味系の「Cミックス」。この2つが現在のマイルドブレンド、ジャーマンブレンドの原点といえるブレンドだったのです。

常識にとらわれず変わらぬ味を技術で提供

同じようにコーヒーを販売するにも、業務用と一般用では全く異なります。当時はどう商品化していいか試行錯誤しました。そして当時はまだ珍しかった、真空パックに着目。風味を壊さず、長い時間保存ができる方法として採用しました。

工場で焼いた豆を挽いて、真空パックにしてくれる工場に委託、既製品の金ピカのアルミパックに詰めたんです。そして出荷する直前にピンホール検査をして、表にブレンド名のシール、裏に一括表示のシールを張って出荷。容量も大きくして、美味しいコーヒーを比較的安く提供しました。真空ですから、表面はシワシワで固く、いま思えば個性的だったといえます。

生協様のバイヤーにこの商品を見せたら、この手造り感がいいよと言ってくれたんです。企画が決まった時は本当に嬉しかった。そしてこの「シワシワ金ピカパック」(現マイルドブレンド300g)がありがたいことに物凄くよく売れました。今でもそのバイヤーは恩人と思っています。

そして生協様やスーパー様などで展開がスタートしました。その後、より安価で品質を担保できるバルブつきのアルミソフトパックに切り替えました。真空パック時のデザインをそのまま踏襲したものですが、現在と同じバブルパックにすることで商品のグレードが上がり、本当に感激したことを覚えています。コストカットのお陰もあり、順調に売れ行きも良くなり、お客様からもお褒めのお言葉をよくいただきました。

いつも美味しい珈琲をお求めやすい価格で

ところが2008年、コーヒー業界が思わぬ事態に見舞われます。「モカ」として知られるエチオピア産コーヒー豆で、基準を超える残留農薬が検出。輸入禁止に追い込まれたのです。

まさに青天の霹靂といえる事態に、私たちも非常に驚きました。それと同時に、天下の「モカコーヒー」が使えない。仕方なく数年間は他の豆を使用することで同じ味になるよう努力致しました。しかしモカにとって代わる豆は無く、完全には同じ味は造ることができませんでした。2010年には問題が解消しようやくモカが解禁。本来の味に戻すことができました。

しかしこの「事件」をきっかけに、2011年に全面リニューアルを実施。デザインを一新して発売したのが現在の300g入りのマイルドブレンド・ジャーマンブレンドなのです。座りのよい四隅が角ばった最新の包装材料。マイルドは金メタリック、ジャーマンは赤金メタリックで以前のデザインを一部踏襲。モカが復活しただけでなく、焙煎度合いや配合等を見直し。アラビカ種100%のコーヒーで、満足できる味に仕上げることができました。

創業70年になる麻布タカノの顔ともいえる根幹コーヒー。「酸味系で甘い香りのマイルド」と「苦味系でコクのある旨味を強調したジャーマン」。日常のご愛飲いただけるブレンドに相応しいいずれも飽きの来ない味に仕上がっています。先代が残してくれた私たちのオリジナルコーヒー。環境の変化が激しい時代であっても、変わらぬ味と品質でみなさまに提供し続けたいと思います。